私の夫は若いとき女の子にモテようと思ってギターを始めたらしい・・・。
その術中にはまった私は、夫にほれてしまった。付き合っている当時、デートでよく楽器屋さんに一緒に行って、何本も何本もギターを見たけれど、当時の私にはデザインや音色の違いがよく分からなかった。
「これ、すっごい良い音だよね」と、夫が私にうれしそうに言う。私は「うーん、いいかも?」といつも決まって答えていたけれど、実は何も分かっちゃいない・・・。
ところが、今は仕事が忙しくなり、部屋の片隅で、ケースに入った一本のギターが淋しそうに眠っている。
最近このギターが眼を覚ました。それは高校生と大学生になる二人の娘の前でのこと。娘に自慢したいのかモテたいと思うのか、夫はたまにひく指先の痛さを我慢して、ニコニコしながらチューニングしている。そして、気がつくと、いつの間にか娘たちと三人で楽譜を囲んで、ギターを弾きながらハモっている。西野カナ・YUIの曲を奏でる優しいお父さんの顔、訳ありで始めたギターも今や娘達とのコミュニケーションの一つになっている。
私はいまだに、ギターの音色の良さは分かってはいないが、夫と娘たちが楽しむ姿に、横からちゃちゃを入れながら、家族団らんの幸せな時間を感じている。
趣味は趣味でも、自分だけが幸せな時間を過ごせればそれでいい、人なんか関係ないっていう「孤高な」趣味とは違い、周りと一緒に楽しみを共有できる趣味っていいなぁと心底思う。人はどんなに頑張ったって、人との関わりを絶つことはできないもの。たとえ趣味であっても、それは「人もよし、我もよし」、自他祝福になるかなって考えてみることも必要ではないかなと、このごろ思うようになっている私がいる。
幸せな時間
ペンネーム : ひまわり