相手の状況が分かってみると、案外簡単に事が済むものなのだなと、ちょっと前には思いもしなかった幸福感を味わっています。
母は車で2〜3分のところに住んでいます。母はもともと料理が上手で、今でも、時にお弁当を作ったり、料理を持ってきたりしてくれるのですが、実のところ最近はありがた迷惑……。味が濃すぎるのです。「おいしいかい?」と聞く母に、「もう少し薄味になりませんか」とはとても言えません。どうしてこんなに味オンチになったの?、料理の仕方を知ってるの? こんなに濃い味を食べさせて平気なの? などなど、母が料理を持ってくるたびにいろいろな思いが心の中で渦巻いて、腹が立つくらいイヤ〜 な気分になっていました。
そんなある日、テレビを見ていると「年齢がいくと味覚が薄れたりして、味付けが濃くなる人が多い」とあるコメンテーターが話していたのです。なるほど、そうなんだ〜 歳がいくと味が濃くなるのか、仕方ないんだ〜 と妙に納得。母に腹を立てていた自分がとっても小さい人間に思えました。そしてそのことをあっさり表現したら「おや、そうかい。遠慮なく言ってね」と、拍子抜けするほどの笑顔で答えてくれました。きっと濃い味を好むようになる、何十年後かの自分を戒めたことでした。