私の主人は馬鹿が付くほどまじめで親切な八百屋の店主。とにかく「お客様は神様です!」が口癖で、お客様が頼まれることは何でも「ハイヨー」と応える人だった。
ある日こと、配達から帰って来るなり「この野菜、何ていう並べ方だ! 何度言ったら覚えるんだ!」と激怒。「あなたの言ったとおりに並べたんだけど」と言ったが、主人は一から並べ替えてしまった。こんなことがちょくちょくあったので、「今日はもうやってられない」という気持ちで家に帰り、むしゃくしゃするので気晴らしに友だちとランチに出掛けて愚痴を聞いてもらった。
「朝から晩まで 頑張っているのにねえ〜」と、受け止めてくれてはいたが、最後に「品物の並べ方のことでよくけんかしてるけど、ちゃんとご主人に聞いてやってるの?」と言われ、えっと思った。翌日、主人が品物を並べるのを横目で見ていたら、「今日は寒いから鍋かな?」と、とても楽しそうだった。そうだった、主人からいつも「お客さんのことを考えながら並べるんだ!」と言われていた! いつからかどなられるのがいやで、「言われるとおりに、流れ作業のようにやっていれば機嫌がいいから!」という気持ちでやっていたな〜とがく然とした。それからは、主人に聞きながら、季節の野菜のレシピを並べたり、少し時間がたった野菜をお惣菜にして売ってみたりと、相変わらず口げんかをしながらも、あの手この手と工夫したおかげで、私もどんどん楽しくなってきた。
普段の生活の中で、楽しくないな!と思うことがあったら、いつもと違う角度から見たり聞いたりしながら、ちょっと工夫して違う手段でやってみると、意外と楽しくなるためのきっかけが見えてくることを実感した、八百屋の女将でした。
お客様は神様です!
ペンネーム : うなぎいぬ