大学受験のころ、ある受験講座に参加してみた。最初に講師が「合格するために必要なことが二つあります。それは何か分かりますか?」と皆に問いかけた。『学力は当然必要だろう』と思ったら正解で、「一つ目は実力です。ではもう一つは?」と問われて、まさかの答えは「運です」。一瞬、『なんだそりゃ』と思ったが、そこにはちゃんとした深い意味があった。
〈運〉と言ってもそれは単なる〈偶然〉ではない。「運はその人の持つ人徳の量に関係していて、人徳のある人は運が良くなる。そして人徳は周囲のために努力することで自分に備わっていく…」。
——例えば、いつも時間に遅れて人を待たせていると、時間に対しての徳を失う。肝心な時に不可抗力的なことが起こって、時間に間に合わなくなるような羽目に陥る。逆に、いつも少し早めに出掛けて何か手伝うとか、遅れそうな人がいたら誘ってあげるとかしていると、時間に対しての徳が身につき、タイミングの良い人生になる——
講座全体の結論としては、勉強(=自分のための努力)も、家の手伝いなど(=他人のための努力)も、どちらも頑張ることが合格への近道だということだった。自分のことだけを考えていてはいけないということ、また「時間を大切に扱う」ことの大切さが心に残った。
そうしたことを心掛け、自分だけでなく「同級生全員が合格しますよう」と願って、奉仕作業にも進んで取り組みながらの受験生活。いよいよ最後となる国立大学受験の前日、タイミングに恵まれ、心から敬愛するお方にお会いすることができた。激励のお言葉まで頂くという夢のような展開に、モチベーションも最高な状態で本番に突入した。2日間の試験は心身共に絶好調で、楽しくてあっという間に終わった。合格させていただいたこともうれしかったけれど、肝心の本番で力を出し切ることができたことが幸せで、タイミングの良い出会いに恵まれたことを心から感謝した。