『読み聞かせ修行』 男の子が「読んで」とせがむのは図鑑が多い。カブトムシやクワガタムシ、ポケモンなど、どれもカタカナの名前を延々と読み続け、何のストーリー展開もない。何度でも繰り返し、また最初から。ひたすらカタカナばかりを追っていく。 「読み聞かせ」と言えば、ゆったりと絵本の世界に浸りながら、子供に読んであげるお母さんをイメージしていたが、とんでもない。極め付きは恐竜。その名前の長さと読みにくさは、読み聞かせに多少の自信と喜びを期待していた母親を打ちのめす。舌をかみそうな母に、容赦なく今日も図鑑を持ってやってくる。 ただし、修行の成果はひょんなところに現れる。ある日、昔から恐竜みたいだと思っていた花の名前「デンドロビウム・ファレノプシス」がサラッと言えて驚いた。以前より見違えるほどに、母はカツゼツが良くなっていた。(あつ) |