『行方知れず』 やむなく分度器を買いに行く。明日提出しなければならない宿題を、どうしてやり始めてから分度器が無いことに気付くのか。あるいは無しでも何とかなると、目分量で角度を当てちゃうつもりだったのか。 今まで様々な物たちが、机の引き出しや押入れの周辺で消息を断っている。(ここはもしかして異次元につながっているのか)。現場の立ち入り調査に乗り込むと、大概探しているものは見つからず、どうでもいいようなものが発見される。「あっ、なつかしい。ここにあったんだ」。昔、ガチャガチャで当てたストラップと再会した喜びで、キミは自分で出した捜索願をすっかり忘れている。 時に、全く忘れられた存在が記憶と共に発掘されて、親子で世紀の大発見に沸くこともある。必死で探しても見つからなかったゲームソフトが、半年ぶりに四次元押し入れから救出された時など。いつか分度器もひょっこり現れることを期待して、ひとまず、捜査打ち切りとなった。(あつ) |