『親の心子知らず』 ペンネーム:ぽんこ まだ私が若かりしころ。結婚前の主人とデートして、和食を食べた時のこと。
今は第2の母と呼んでいるこの社長はとても料理が上手だった。私が夕飯を作って「おいしくありませんけど、どうぞ」(謙遜ではなく、本当にまずかった)と出した。そうしたらすごく叱られた。「作った本人がまずいなと思って出して、相手さんにおいしく召し上がっていただけるはずないでしょ」と。だって味が分からないのだからどうしようもない。だからだろうか、それからは日本橋などにある美味しいお店によく連れて行って下さった。 社長はボランティア精神の固まりのような人で、社長宅には常に誰かが来て、いつもにぎやかだった。そんな中、会社のお得意さんを自宅に呼んで、お料理をお出しすることもしばしばあった。しかし、料理がきらいな私は苦痛で苦痛で。とうとうストライキを起こしてしまった。「私には接待は無理です」。これを境に自宅でのお得意さんへのお接待はぴたりとなくなってしまった。その後反省して何度か、またやらせて下さいとお願いしても、「一度言った言葉は消えません」と厳しい一言。 今思えば、社長は「駄目なこの子を何とかしなければ」という親心だったのだろう。駄目な子ほどかわいいって言うし・・・。
そしてあの時ストライキを起こしていなければ、今ごろは一流料亭並みの料理で家族や友達を喜ばせることができたかも知れない。実に惜しいことをした。 |