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『父へのプレゼント』

挿絵

ペンネーム:ぴんくべりー

 4月は父の誕生月。今年は家族揃ってレストランでランチをし、美術館に絵画を見に行った。

 当日、私から何かプレゼントをするわけでなく、食事をご馳走するわけでなく、レストランから父に『誕生日おめでとう』のプレートの乗ったデザートが運ばれてきた以外、いつも通りの休日だった。  

 父には申し訳なかったが、私にとってはとても有意義な一日に思えた。

 中学生の頃から親元を離れ、寮での生活を始め、大学に入ってから現在まで一人暮らしをしている私にとって、父の誕生日に実家にいることは10年ほどなかったように思う。久しぶりに誕生日のお祝いを一緒にできて、とてもうれしかった。

 昨年は父に財布をプレゼントした。

 父の革財布は長年使い込まれていて、二つ折り財布の折り目は白くなるほどだった。

 プレゼントした財布は決して上等な財布ではなかったが、父はその場で中身を入れ替え、それからしばらくは私が帰る度に笑顔で『使ってるよ』とわざわざ財布を持ち出してきて見せてくれた。

 家族とはいえ、父へのプレゼント選びは難しかった。

 正直、何をプレゼントしたらいいかわからず、たまたま古くなった財布を使っている場面を見て、財布を思いついたのだった。

 古くても、何か思い入れのある財布だったかもしれないし、私が選んだものが好みではなかったり、使い勝手が悪かったかもしれないが、喜んでくれてうれしかったし、そんな父の優しさに温かい気持ちになった。

 きっと父は、何をプレゼントしても喜んでくれるだろう。

 しかし、そんな父だからこそ、今年はプレゼントを贈る私も真剣に考え、これだ!というものをプレゼントしたいと思う。

  
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