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『思いやり』

                                                 くのきっこ

 熱が出て近所の医院へ行きました。私は母子家庭なので、3歳の娘を預ける所がありません。娘を連れて、熱でふらふらしながら混んでいる待合室にいました。インフルエンザがはやっていた時期で、具合の悪そうな人がたくさんいて、「娘にうつるかもしれない」と心配でしたが、体がしんどくてそれどころではありません。

 その時、院長の奥さんが出てきて、ソファーに横になるようにすすめてくれました。奥さんとはスーパーなどで会うと挨拶を交わすほどの顔見知りでした。そして「今から買い物に行くから、何かついでに買ってきましょうか、お昼にかかりそうだし」と言ってくれました。娘に食べさせるパンをお願いしましたら、「おばちゃんのお買い物、一緒にお手伝いしてもらっていいかしら」と娘を連れ出してくれました。挿絵

 診察が終わるころ、二人は帰ってきて、ついでだからと車で家まで送ってくれました。下りる時に、「お節介も入れちゃってますよ。母親が病気でも子供はおなかがすきますからね」と、レジ袋を渡してくれました。

 アパートの部屋に戻って、袋を開けると、パンの他に温めれば食べられる食品が幾つかと真っ赤でつやつやのイチゴが入っていました。そしてそこには小さな紙が貼り付けてありました。「早く良くなれ!」。思わず涙がこみ上げました。こんな温かさを、私はしばらく忘れていたのでした。

 こんなふうな優しい感動を、私も人に上げられるような人になりたい、娘もそんなふうに育てよう、と思いました。

  
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