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『感謝ノート』

挿絵

             ペンネーム:魚々子

 以前いた職場に苦手な上司がいました。その人のことが嫌いで、仕事に行きたくない毎日でした。けれどある日、感謝ノートを書いてみたらと勧められて、書いてみることにしました。

 感謝ノートというのは毎日三つ、ノートに感謝を書くということです。これを書いていくと毎日が楽しくなったり、苦手なものごとに感謝すると克服できたりするというので、人に勧められて取り組んでみました。
 気がすすまないままに毎日苦手な上司について感謝を書いていきました。最初は「今日は嫌味を少なめに言ってくれてありがとう」などと無理やりに書いても一つだけしか書けないこともありました。けれど、毎日続けるとだんだん無理なく三つ以上書けるようになりました。挿画2
 自分の苦手意識は置いておいて、感謝を探すためにその人のことをよく見ていたら、言い方はぶっきらぼうでも、そこに私を育てようとして教えてくださっていることが見えてきたり、仕事ぶりが誠実で尊敬するところがたくさんあるという、本来のその人が見えてきたのでした。

 そしてノートがいっぱいになる頃には、その人のことを嫌いな気持ちがまったくなくなり、それどころか信頼と尊敬の気持ちを持つようになりました。

 仕事をやめて何年もたつ今でも交流があり、苦手なまま仕事をやめていなくてよかったなと思っています。

  
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