『祖母の力』 ペンネーム:陸つづき 母方の祖母は、少し心配性で、いつも孫の僕たちのことを心配してくれていた。母は、帰省するときに道中の心配をさせないため、祖母には内緒にして行くこともあった。突然やって来た僕らを、驚きと喜びで迎えてくれた祖母の表情が今でも忘れられない。 僕たち孫が、よい成績を取ったり、運動会で1等になったりすると、心から喜んでくれた。いつしか、祖母の笑顔を何かと励みにしている自分がいた。 父方の祖母は、寡黙な感じの人で、働き者だった。子供のときに、朝ごはんに出たナスの味噌汁をおいしいと言ったら、20歳になっても30歳になっても、帰省するたびにナスの味噌汁が出てきた。 とても長生きで、僕が結婚を決めたときには97歳になっていた。結婚相手を連れて、祖母が入っていた施設を訪れた。妻になる人を紹介すると、「これで善蔵も安心だね」と、父のことを言った。いくつになっても母親は母親なのだなあと思った。3人の子供が生まれ、また祖母を訪ねた。100歳を越えたひいおばあちゃんの握手を、子供たちは怪力だと言った。 大学受験のとき、不安で勉強が手につかないことがあった。そんなとき、ご先祖様にお願いすると何でも聞いてくださるという話を聞いた。2人の祖母は、まだご先祖様にはなっていなかったが、そうだ、僕が合格すればおばあちゃんたちはすごく喜んでくれるだろうな、と思った。それから、不安なときには祖母たちが喜ぶ顔を想像するようにした。おかげで試験当日も、不安になると祖母の顔を思い浮かべ、答案用紙に集中した。 |
今はどちらの祖母も、本当のご先祖様だ。少し早かったが、母もご先祖様になった。その母も含め、うちの子供たちも、おじいちゃん、おばあちゃんたちのおかげで元気に育っていると思う。 |