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『ひとことの挨拶から』

ペンネーム:マスター

挿画01 以前海外に出かけ、スーパーで買い物をした時のこと。レジで支払いをして、その場を去ろうとすると、係の女性が笑顔で「いい一日を過ごしてくださいね」と声をかけてくれました。そこでは多くの人がそのように言葉を交わすことを知り、次の機会にこちらから「いい一日を!」と言ってみました。すると今度は「あなたもね!」と返ってくるではありませんか。たった一言ではあったけれど、心を弾まされたささやかな体験です。

 このことで私は、これまでレジであまり言葉を交わさず味気ない支払い方をしていたのかなと、わが身を振り返って思いました。さりげない言葉でも、交わすことによって、お互いが一日をより気持ちよく暮らすことができるなら、同じ社会の一員として意味のあることだと感じます。

 さすがに日本では、「良い一日を!」とは言いにくいので自分流のアレンジですが、以来私は今でもレジでお金を払う時には「お願いします」を、そしてお釣りを受け取る時に「ありがとう」を添えるよう努めています。

 このようなささやかなことでも年数を重ねていくうちに、例えばスーパーでの買い物なら、お店に並ぶ野菜を栽培してくれた人、運搬や陳列にたずさわる人、そして目の前にいてレジを打ってくれる人、そういうたくさんの人のお蔭で、不自由なく買い物ができるのだということを、思い出してみることにもつながっています。

 今を生きる私たちの社会は大き過ぎて、お互い支え合いの実感が薄れているかもしれませんが、ささやかなレジでの「ありがとう」の度に、私の生活が人様に支えられていることを感じることで、私の中の「あたりまえ」が一つ一つ「ありがたい」になればいいな、と願っています。

  
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